税務会計の一里塚 ~キャッシュ・フロー計算書の成立ちと役立ちNo7~
- 赤田 元日出
- 1月26日
- 読了時間: 4分
キャッシュ・フロー計算書を分析する際に
私は、キャッシュの増減パターンに着目して
大きく3つのパターンに分類しています。
実際は8つのパターンが存在します。
営業キャッシュ、投資キャッシュ、財務キャッシュの3項目のそれぞれについて
プラス、またはマイナスの2通りがありますから
2×2×2=8通り。
実際に、手元にある本(「決算書から「経営の打ち手」がわかる本」(宮崎栄一著))を見ても
ウォーターフォール・グラフを用いて
8通りのパターンを解説しています。
私が、3つに分類するのは
直観的にわかりやすい、ということです。
3つのどのパターンに当てはまっているのかを確認して
連続した月次のキャッシュの状況がどのパターンなのかをみると
会社の状況がよくわかります。
3つのパターンは、下記です。
1,創業回復型
2,拡大成長型
3,縮小衰退型
今回から、この3つのパターンを概観したいと思います。
まずは、「1,創業回復型」を見ていきましょう。
この「創業回復型」ですが
「創業型」と「回復型」が同じパターンを示すことから
一つの類型にまとめています。
では、
「創業型」と「回復型」のそれぞれを確認していきます。
ア、創業型
「創業型」は、創業期において見られます。
その特徴は、
事業を開始するにあたって、
一般的に、固定資産の購入があります。
・・・投資活動キャッシュ・フローが「マイナス」
そして、事業を開始したばかりですので
売上が少なく、経費の支払いが多くなります。
・・・営業活動キャッシュ・フローが「マイナス」
上記の設備資金や運転資金を賄う必要がありますので
金融機関などから借入を行います。
・・・財務活動キャッシュ・フローが「プラス」
これを数字で具体的に見てみます。
A社は、
固定資産を100購入して
事業を開始しました。
創業期ということで
売上入金が、経費支払いを賄うことができずに
200不足しました。
これらの設備資金、運転資金の需要を満たすために
金融機関から、500の資金を借り入れました。
この状況を、キャッシュフロー計算書に表すと
【図1】のようになります

創業型の増減パターンは、
上から順番に「ー、ー、+」です。
これを、給与所得者の場合にあてはめると
今月は、大きな出費があって、生活費がたくさん必要で(営業キャッシュが-200)、
おまけに、車も購入しました(投資キャッシュが-100)。
それらを、キャッシングで賄った(財務キャッシュが+500)、
という感じです。
イ、回復型
回復型は、
事業が成長段階から踊り場を迎えて、
下降気味にあるときに現れます。
その特徴は、
事業が不調ですので、売上が伸び悩み、経費支払いがかさみます。
・・・営業活動キャッシュ・フローが、「マイナス」
それを賄うために
成長期に蓄えてきた貯金を使っていきますが
中小企業にはそれほどの余剰資金は、一般的にはありません。
そのため、借入を行ってしのぎます。
・・・財務活動キャッシュ・フローが「プラス」
これを数字で具体的に見てみます。
(金額は【図1】と同じにしてあります)
先ほどのA社は、成長期を経て、
事業が伸び悩みの状況を迎えました。
売上入金が、経費支払いを賄うことができずに
200不足してしまいした。
この運転資金の需要を満たすために
金融機関から、500の資金を借り入れました。
この状況を、キャッシュフロー計算書に表すと
【図2】のようになります。

増減パターンは、上から順番に「ー、0(ゼロ)、+」です。
これを、給与所得者の場合にあてはめると
役付きになり高額所得となったが、
子どもが大学進学などで大きな出費があったために
給与で賄うことができなかった(営業キャッシュが-200)、
それらを、教育資金借入で賄っている(財務キャッシュが+500)、
という感じです。
この回復型について
さらに補足すると
従来の事業が頭打ちになっている状況を考えるなら
新しい設備を導入する、
または
新事業をたちあげるために固定資産を購入する場合も考えられます。
その場合は、投資活動キャッシュ・フローの「マイナス」が発生しますから
【図1】と全く同じパターンとなり
増減パターンは、上から順番に「ー、ー、+」です。
以上をまとめます。
増減が、上から順番に「ー、ー(または、ゼロ)、+」の増減パターンが出現したら
「創業回復型」であると判断できます。
「創業回復型」のパターンが出現した場合には、
次に「拡大成長型」のパターンに移行できるか、
それとも「縮小衰退型」パターンへ落ち込んでいくかを
注意深く見ていくことになります。
次回は、「拡大成長型」を概観したいと思います。
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