税務会計の一里塚 ~キャッシュ・フロー計算書の成立ちと役立ちNo5~
- 赤田 元日出
- 2024年11月17日
- 読了時間: 3分
前回は、
キャッシュ・フロー計算書の書式(フォーム)を確認いたしましたので
今回からは、その書式(フォーム)を活用していきます。
利益が赤字でも
会社が、資金繰りに困らない(≒倒産リスクが低い)場合を
見ていきたいと思います。

【図1】のキャッシュ・フロー計算書を見ると、
税引前利益がマイナス(▲100)になっています。
そして、財務活動で元本返済100がありましたので
現預金増減高は▲200となり、
現預金残高が期首の1000から期末の800へ減少しています。
事業活動が赤字であったことと、元本の返済という2つの影響で
資金が減少してしまいました。
今後も、このように赤字が続くと、
元本返済も賄うこともできずに、
資金の減少が続き
事業活動が困難になることが予想されます。
では、次に【図2】のキャッシュ・フロー計算書を見てください。
【図1】と異なるのは、黄色の「減価償却200」が加わったことです。

そうすると
営業活動キャッシュフローが+100となり、
財務活動キャッシュ・フローの▲100と相殺されて
現預金増減高は0(ゼロ)となりました。
現預金残高は期首と期末では変化ありません。
この内容(赤字)が続いても、運転資金は減少しませんので
事業活動は継続できることとなります。
そして、
法人の場合、赤字(欠損金)発生すると
税金は、地方税の均等割りのみとなりますので
節税にもなります。
(上の図では、法人税の支払いは割愛してあります)
このように。【図2】のキャッシュフロー計算書のパターンになれば
会社にとって良い赤字と言えます。
なお、
減価償却費が計上されるということは
当期以前に、大きな買い物(建物や機械や車両など)の購入があったはずで
その時に購入資金について借入がなされるのが一般的です。
これは、
【図2】の減価償却費と借入返済は見合いになっていることを意味します。
そのため、
固定資産を借入金で購入する場合は
借入の返済期間の目安として、購入資産の耐用年数を参考にすることもあります。
(例)500万円の固定資産(耐用年数10年、定額法)を、500万円の借入(返済期間=耐用年数10年)で購入する。
1年間の減価償却費=500万円÷10年=50万円
1年間の元本返済 =500万円÷10年=50万円
このように「減価償却費=元本返済額」となります。
この利点は
元本返済額50万円と、損益計算書の減価償却費50万円と一致しているので
あたかも、元本返済額が経費になっているかのように見ることができて
わざわざキャッシュフロー計算書を作成しなくても
損益計算書が、キャッシュ・フロー計算書の役割も果たすことにあります。
少々脱線しましたので
話を本筋に戻しますと
良い赤字=現預金が減少しない赤字
と言え、
減価償却費の金額を加味したときに
借入返済を賄えることが一つの条件となります。
次回は
今回の逆パターンとなる「黒字倒産」を見る予定です。
すでに1度説明をしていますが
キャッシュ・フロー計算書の書式(フォーム)を使って
再度確認してみたいと思います。
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