税務会計の一里塚 ~キャッシュ・フロー計算書の成立ちと役立ちNo2~
- 赤田 元日出
- 2024年8月25日
- 読了時間: 3分
前回は、
事業の継続・発展のためには
利益よりも資金増減が重要でること、
そして
損益計算書だけでは資金増減は把握できずに
別な計算書類「キャッシュ・フロー計算書」が必要であることを
借入金の返済がある場合を例にして
見てきました。
今回は、
固定資産の購入があった場合を見ながら
損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の関係、
および
資金の動きを確認していきます。
固定資産を購入した場合には、一時に経費にできず、
減価償却計算に基づいて
規則的に経費計上していきます。
例えば、固定資産(機械など)500で購入して
耐用年数10年で減価償却計算すると
毎年、均一的に経費計上するならば(定額法)
500÷10年=50/年
となって、
1年間に計上できる経費(減価償却費)は50と計算できます。
この事例もとに、下の【図1】を見てください。

【図1】は、お金の動き「収入ー支出=資金増減(貯金の増減)」を表しています。
固定資産を500で購入しているので「ー500」と計上してあり、
収入1,000から、各支出を控除すると、72の資金が増加した(貯金が増えた)ことが分かります。
次に、
【図1】を変換して、損益計算書に表示を直したのが【図2】です。
固定資産取得の500は、一時の経費にならないのでしたから
「①減価償却費」の50だけが経費となります。
その結果、
税引後利益は522と計算されて、
【図1】の資金増加72とは、大幅に金額が異なることとなります。
前回の説明同様、
損益計算書だけでは、資金の動きは追えないことが理解されます。
そのため、
損益計算書から、資金の動きを理解できるようにするためには
固定資産の購入及び経費計上(減価償却費)に関して
2つの調整をすることとなります。
1つ目が、減価償却費です。
この減価償却費は、
一定の計算に従って、算出した数字を
経費に計上したにすぎず、
実際は、その金額が支払われたわけではありません。
実際の資金の視点からみると
「架空の資金支出」、「幻の資金支出」と言えますので
この影響をなくすために、
税引後利益に減価償却費を足し戻すこととなります。
それが「①’ 減価償却費調整」の+50です。
2つ目が、固定資産購入に関して支出した金額です。
減価償却費を調整したことで、
現時点で、
固定資産購入ついては、まだ考慮されていません。
そのため、
「② 固定資産購入」としてー500を計上します。
そうすると、
資金の増減は
税引後利益522+減価償却費50ー固定資産購入500=72
と、算出されて、【図1】の資金増減72と一致します。
今回は、
固定資産購入について
キャッシュ・フロー計算書の成立ちを見てきました。
1,減価償却費を足し戻すことと
2,固定資産の実際の購入金額をあらためて控除すること
の2点を調整する必要があることを見ました。
また、前回同様、
・損益計算書の利益だけでは、資金の増減は把握できない。
・資金の増減を把握するには、利益に調整加えていくことで、キャッシュフロー計算書を作成する必要がある。
ということも、再度確認されました。
実務においては
固定資産を購入する場合、
それに合わせて、購入資金について
借入を行う場合も多くあります。
次回は、
「固定資産購入+新規借入+借入返済」について
損益計算書やキャッシュ・フロー計算書の成立ちを見ていきます。
「前回No1の内容と、今回No2の内容を合わせた内容」になることが想像されることと思います。
Comments