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日常茶飯の清水                       ~詩『お嫁に まいりますーーーかば』(山崎陽子)~

  • 執筆者の写真: 赤田 元日出
    赤田 元日出
  • 2024年8月17日
  • 読了時間: 5分

鈴木秀子さんの著書『わたしの心が晴れる』を読んでいます。

その中で『お嫁に まいりますーーーかば』という詩が紹介されています。

「美しさの基準はどこにある?」という項目で、

スタイルに自信のない女性が、

きれいなウエディングドレスを着て

結婚式なんてできっこない

と、嘆きます。

それに対して、この詩が添えられます。





              <サイト:パブリックドメインQ 著作権フリー素材より>





ちょっぴり 恥ずかしいけれど

やっぱり お話し いたしましょう


わたくし お嫁に まいります

おむこさんは となりの村の

やさしい目をした かばさんですの


大きなからだに ぴったりの

花嫁いしょうが あるかって?

ご心配には およびません

結婚式には ともだちの

ちょうちょが 百匹 飛んできて

背中に とまってくれますの

ちょうちょと 花に 飾られて

月夜の 川を下ります

わたくし お嫁に まいります


   山崎陽子『動物たちのおしゃべり』



句読点が無く、その代わりに、スペースを開けることで

大きな体のかばが、ゆったり、ゆっくりと話している雰囲気が伝わってきます。


第一連の「ちょっぴり 恥ずかしいけれど やっぱり お話し いたしましょう」について。

今日は、この嬉しさ、この幸せを皆さんに報告しようと決意してきたのに

いざ、その場になると、照れて恥ずかしくなってしまいます。

でも意を決して、予定通りに、報告する勇気をふりしぼります。

かばの性格は、臆病で、メスはオスよりも慎重なのだそうです。



第二連の「わたくし お嫁に まいります おむこさんは となりの村の やさしい目をした かばさんですの」について

「わたし」ではなく、「わたくし」という表現から、

かばさんのあらたまった感じや丁寧さ、礼儀正しさが窺われます。

また、

「結婚します」ではなく「お嫁に まいります」という表現には、

おむこさんのところへ行って、これから一緒に日々を過ごすのだという喜びが感じられます。

そして、

「まいります」という表現に、慎ましい姿を感じます。


おむこさんの紹介は、「やさしい」「目」をしているという特徴を伝えています。



<サイト:写真素材ダウンロード blue-greenより>


かばは、

「目と耳と鼻の穴が顔の上側にあり、

体が水中にあっても目と鼻だけを水面にだして呼吸することができます。

泳ぎも潜水もじょうずで、

6分間ほど潜っていることができ」(東京動物園協会「東京ズーネット」より)るのだそうです。


おむこさんとのデートの場所は、

川の中が多いでしょうから

水面に出ている「目」がクローズアップされるのでしょうね。

水面上で、まさしく見つめあっているのですから

私たち人間の視点では、ロマンチックですね。

そして、

デートの最中に、草を食べたり、または天敵のライオンから逃げるときに

その「やさしさ」を感じるのでしょう。

この連は、結婚の報告をしながら

知らず知らずに、のろけてしまっている、という感じになっていて、

先ほどの恥ずかしさは消えて

おむこさんのことを想像しながら

喜びで満面の笑みになっていることでしょう。


第3連は、そんなおのろけに対して

周りから、ちょっとしたヒガミが発せられます。

大きなからだに ぴったりの 花嫁いしょうが あるかって?

かばさんは、笑顔満点の顔で、きっとますます胸を張って、心配ご無用とばかりに、

結婚式には ともだちの ちょうちょが 百匹 飛んできて 背中に とまってくれますの

と答えたのでしょう。

心から祝ってくれるたくさんのちょうちょが集まってくれて

しかも、この大きな体をそのちょうちょが飾ってくれる。

大きな体だからこそ、たくさんのちょうちょの祝福の気持ちを受け入れて、

誰にもまねできないウエディングドレスを創作してくれるのよ、と。


「花嫁いしょう」と表記されて、ひらがなになっています。

衣装という漢字では収まりきれないからなのでしょう。


ちょうちょと 花に 飾られて 月夜の 川を下ります」の部分。

かばは、

「日中は水に浮いたり、水辺にねころんですごし、

夜、陸に上がってきて草を食べ」(東京動物園協会「東京ズーネット」より)るのだそうです。

かばさんの結婚式は、夜、陸で食事を食べながら執り行われるのでしょう。

ちょうちょのウエディングドレス、花のティアラで身を飾り、

月のスポットライトを浴びながら、

川のバージンロードを厳かに

パートナーの元へしずしずと向かいます。

そんな幸せに満ちた光景を、

周囲のひがみの言葉からではありましたが、

かばさんは想像しています。


そして、最後の「わたくし お嫁に まいります」。

最初の照れて恥ずかしがりながら報告したときとは

うってかわって、

顔の表情も、言葉の調子も、違っているはずです。

力強く、愛に満ちた表情や口調でしょう。


今や、

やさしいパートナーのことを想い、

友人や天地自然に祝福されていることを感謝しています。

「わたくしは いま しあわせです」とあふれる喜びを声高らかに宣言してるのでしょう。



              <サイト:パブリックドメインQ 著作権フリー素材より>


この物質世界においては、

目に見えるものごとが、重要視され、

ほしい物質が溢れていれば幸せになると思われています。

でも、

よく言われることではありますが

物は、たくさん無くったって

喜びも幸せも、心の中で何を選択して、何を感じるかにかかっています。

「花嫁いしょうは、着られるの?」という物質の次元ではなく

精神世界を覗きこんでいって、

ちょうちょの祝福してくれる気持ちや一体感、天地自然への感謝という選択をすることで

喜びや幸せを感じていけるのでしょう。











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