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易経とキャッシュ・フローの沼No6               ~百円均一市場第3位の「キャンドゥ」は今後の資金不足を乗り越えられるか~

  • 執筆者の写真: 赤田 元日出
    赤田 元日出
  • 9月28日
  • 読了時間: 9分

今回は、百円均一市場分析の2回目です。

業界第3位の「キャンドゥ」を分析していきます。



前回の再掲
前回の再掲

最初に、

百円均一市場にけるキャンドゥの位置を確認してみます。

上記グラフは

百円均一市場における大手4社について売上高を表示しています。

キャンドゥは、直近で833億円の売上高を計上しています。

第2位のセリアは2363億円の売上高ですので

その差は1530億円で約3倍の差があります。

一方、4位のワッツ売上高は612億円ですので、その差は221億円です。

この5年間、この並び順は変わらず、

キャンドゥは、業界3位の地位を維持しています。


次に、

キャンドゥの決算数値を見ていきます。



ree

キャンドゥが、他の3社と大きく異なる点は

親会社をもっているという点です。

2022年1月にイオン株式会社の子会社となっていて

その影響で、第29期は15か月の変則決算となっています。

親会社の意向に影響を受けた経営になっていることが想像さられます。


上記の損益を見てみます。

変則的な第29期を除いて検討しますと

売上高は、右肩上がりで、毎年増加しています。

経常利益も安定しています。


好調の要因は、店舗数の増加にあります。

有価証券報告書から出退店状況を見てみます。


「新規出店数は120店舗(直営89店舗<委託店含む>、FC店31店舗)、退店が78店舗となり店舗数は42店舗の増加となりました。これにより当連結会計年度末における店舗数は1340店舗(直営店894店舗<委託含む>、FC店439店舗、海外FC7店舗)となりました。」(第31期有価証券報告書より)


このように

百円均一業態は、店舗数を増加させることで

業績を伸ばしてきますので

どれだけ優良な立地を選択できるか、

どれだけ店舗数を増加できるかが、

ポイントになります。


では、

キャッシュ・フローを具体的に検討します。

なお、投資活動キャッシュフローの主な内容は、出退店に伴うものです。


第27期・・・【成長拡大型】営業キャッシュフローが20億円創出されて

       投資活動キャッシュフローや財務活動キャッシュ・フローの資金需要を賄っています。


第28期・・・【縮小衰退型】この期から、ある意味、強気な経営姿勢が見て取れます。

       百円均一市場は、出店数を増加されることで、売上高を増加させていきますので、

       絶え間なく、出店をしていくことになります。

       好条件の立地を、他社も調査して、探していますので、

       日本というパイの取り合いになっています。

       生き残れるかどうかは、どれだけパイを獲得できるかにかかっていますので

       必然、投資活動キャッシュフローは、毎年巨額となります。

       28期も20億円の投資を行っていて、営業活動キャッシュフロー11億円では賄えずに

       手元資金(貯金)を充当しています。

       そのため、現預金は減少しています。


第29期・・・【縮小衰退型】この期はイオンに子会社化されて、15か月という変則的な年度になっています。

       営業活動キャッシュフローは9億円ですが、投資活動には15億円投下していますので

       資金は減少しています。


第30期・・・【縮小衰退型】営業活動キャッシュ・フローはマイナスです(△9億円)。

       出店は継続していますので、21億円を投下しました。

      その結果、30億円の資金流出が発生していますので

       それを補うため、財務活動で27億円賄っています。

       有価証券報告書によれば、

       「運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行と当座貸越契約を締結しています」

       とのことです。

       しかし、資金残高は減少しています。


第31期・・・【縮小衰退型】営業活動キャッシュフローで18億円の資金を生みだしましたが

       投資活動に25億円を注ぎ込んだために、やはり現預金残高は減少しています。


以上のように、

第28期以降は、毎年資金残高を減少させているという大きな特徴があります。

営業活動キャッシュ・フローで賄えない額の投資活動(出退店)を行っていることが

理由ではあるのですが、

資金(貯金)があるかぎり、

市場のパイ争い(出店競争)をやめるわけにはいかない、

という強い意思表示とも受け取れます。


この点について、

フリーキャッシュフローから再確認してみましょう。


ree


28期以降、

フリーキャッシュフロー(営業活動キャッシュ・フロー+投資活動キャッシュ・フロー)は

常にマイナスとなっています。

第30期は、フリーキャッシュフローのマイナスが過大だったために

借入を行って(財務活動キャッシュ・フロー)、資金増減を安定させています。


現預金残高の推移を見てみましょう。


ree


第28期以降は、

現預金残高は、毎年減少しています。

第28期は11億円の資金を減少させましたが

29期以降は、その減少幅は緩やかになったとはいえ

次第に減少額が大きくなってきています(第29期:△111百万円、第30期△290百万円、第31期△797百万円)。

第31期の現預金残高は約20億円で、前期からの減少額は約8億円ですから

もし、このペースで資金が減少してくと


20億円÷8億円=2.5年


で資金が無くなってしまう計算です。


先ほど見たように

借入に関して、

当座貸越契約を締結していて

極度額64億円に対して、39億円が実行されており、差引25億円が残っていますので

これを活用していくことは当然考えられますが、

借り入れたところで、返済する原資(フリーキャッシュフロー)がありません。

フリーキャッシュフローをプラスにして返済原資を生みだす必要がありますが、

そのためには

既存店舗の売上増加により営業活動キャッシュ・フローを増加させたり、

出店速度を緩めて投資活動キャッシュ・フローを減少させたりすることが求められるでしょう。


キャンドゥとしては

出店競争に後れを取りたくないため

投資(出店)に対して資金を注入したいが、

その資金が、事業から生み出されるキャッシュでは賄いきれずに

貯金を食いつぶしている状況です。

このままでは

いずれ、資金不足に陥ってしまいかねません。

親会社の増資による資金支援があるか否かがポイントになってくるでしょう。


それでは、

今後のキャンドゥの経営状況について

易で占ってみたいと思います。

得卦は、


「火風鼎(かふうてい)の3爻変、火水未済(かすいびせい)へ之(ゆ)く」


です。


ree

鼎(かなえ)とは、

古代中国で食物を煮るのに用いた銅器のことです。

形は丸く三本足で、上方に耳があり鉉(つる)をつけて持ち運びします。

先祖のみたまや土地の神々や諸侯が集まって盟約を結ぶ際の礼器として

用いられたもので王位とか帝業にもたとえられます。

そのため、天下を狙い、帝位をうかがう野心も意味します。


また、

この卦は、下に木(「風」は木も表す)が位置し、上に火があります。

説明書きには、「亨飪(ほうじん)するなり」とあり

煮炊きする意味があります。

これは、煮炊きする対象があるということであり

煮炊きすることで、その対象は良い方向へ変化することを含意しますので

直接的に言うと、

内部に問題があることを示唆しています。


そして、易では

2爻と5爻が中を得ており、調和がとれているわけですが

これを基準に、初爻と4爻は不足を、

3爻と上爻は行き過ぎを示します。

今回、火風鼎の3爻を得ていますので

状況が、行き過ぎていることを表します。


以上を、キャンドゥに当てはめると


まず、鼎の3本足は、キャンドゥが業界3位であることを表しています。

業界第3位として確固とした地位を築いたキャンドゥは、

業界1位を目指す野望をもって、出店競争を行っているが

内部に目を向けると

出店を継続していくには、

その原資となる資金が減少しつつある、出店に対する投資活動のスピードが速すぎる


と解釈できます。


ところで

易の卦は、上下それぞれ3本の線で別れますが

上半分(上卦)が相手方を、下半分(下卦)が自分を表します。

相手と自分が、和合(調和)するかどうかは、

下のように対応する爻で判断します。


   上卦     下卦

   上爻 ・・・ 3爻


   5爻 ・・・ 2爻


   4爻 ・・・ 初爻


対応する爻が、

陽爻と陽爻、または陰爻と陰爻の場合は、和合しません。

陽爻(陰爻)と陰爻(陽爻)の場合は和合します。



今回の得卦「火風鼎3爻」をみると陽爻となっとており、

対応する上爻も陽爻ですので、

和合していません。



ree

この3爻が変化して陰となるときには、上爻と相応じて和合します。

これは、

陽爻の剛強な性質を変じて、陰爻の柔順な性質にせよ、

という助言です。


これをキャンドゥに当てはめます。


資金援助(追加出資)について

親会社イオンの方針とキャンドゥの方針が折り合わせずに

お互い譲歩をしません。

しかしながら、

このままでは、キャンドゥは事業継続が難しくなりますので

態度を軟化させて

親会社イオンの方針に合わせることとなります。


この後の成り行きは、

之卦「火水未済(かすいびせい)」で解釈します。

「未済」は「未だ済(な)らず」、つまり「未完成」を表します。

「整っていない」、「済んでいない」という意味合いです。

この卦はは64卦の最後に配置されていますが、

そのひとつ前は「水火既済(すいかきせい)」で、

これは、「完成している」、「成就している」、「済んでいる」という意味です。



ree


この「既済」と「未済」を比較すると

どちらも3つの陽と3つの陰が交互に並んでいます。

しかし、

既済の場合は、奇数番目に陽が、偶数番目に陰が位置しているのに対して

未済の場合は、逆になっています。

陽は奇数を、陰は偶数を表しますので

奇数番目に陽爻が、偶数番目に陰爻が位置している既済は、まさに整っているわけです。

それに対して、未済は、陽爻3つと陰爻3つで必要なものは揃っているが

その位置が当を得ていないことになります。


さらに、

火水未済をイメージでとらえてみます。

この卦は、水の上に火が位置していますので

海上の朝日をイメージできます。

まだ日の光は弱くても希望が差し始めているところです。

これから徐々に明るさを増し、すべてのものが活動を始めるときでもあります。



海上に昇る朝日
海上に昇る朝日


これをキャンドゥに当てはめて、


資金は親会社から融通してもらったが

人材配置や新たな店舗や経営方針が、環境や周囲の事情と整合せずに

市場において苦戦を強いられる。

ただし、暗がりの中の光(例えば、新市場)を見つけだすことができれば

逆境を乗り越えられるだろう


と解釈しました。


以上の易占をすべてまとめると


業界3位の地位を確保しているキャンドゥは

業界1位を目指して、出店競争に不退転の意志で奔走するが

出店スピードが急すぎて、資金不足の悩みが見え始めてきた。

親会社イオンから追加出資により資金需要を賄おうと画策するも

方針の違いから、調整は難航する。

いずれは、子会社キャンドゥが妥協して、

親会社イオンの方針を受け入れて、資金を融通してもらえるのだが

人材配置や新規出店や経営方針などが、環境などと整合せずに

市場において苦難を強いられてしまう。

ただし、キャンドゥの未来は明るくないかと言えば、そうとも言えず、

暗がりの中に、例えば新市場の発見などの光を見出すことができれば、

逆境を乗り越えられるだろう、


と占断しました。


今回もお読みいただき、ありがとうございました。

次回の「易経とキャッシュフローの沼」は

業界2位のセリアを分析します。


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※お知らせ※

YouTubeチャンネルを開設しました。

今回の「キャンドゥ分析」について解説動画をアップしていますので

ブログと合わせてご覧ください。



YouTubeチャンネルのリンク; 赤田元日出税理士事務所


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