易経とキャッシュフローの沼No3 ~㈱フジテレビジョンの「目をそむく」~
- 赤田 元日出

- 6月29日
- 読了時間: 4分
6月も下旬となり、
上場会社の中でも
3月決算法人の株主総会が相次いで開催されています。
特に、
㈱フジテレビジョン(親会社は、㈱フジ・メディア・ホールデングス)の株主総会は注目を集めました。
人権・コンプライアンスの問題が発生し
それに関して、経営トップ層の対応が問われました。
大株主である投資ファンド「ダルトン・インベストメント」は
フジテレビジョンの改革を主張して、
12人に取締役候補を株主提案として提出しました。
候補者には、著名な経営者が含まれていましたが
ふたを開けてみると
事前投票の段階で会社側候補者11人が選任されて、
ダルトン側が提案した候補者12人はすべて否決されており
会社側の完勝という結果に終わりました。
では、
今回の決算内容は、どうだったでしょうか。
親会社の㈱フジ・メディア・ホールディングスの報告書において
グループ全体の損益状況や財務状態が合算されて公開されますので
まずは、それを見てみます。

グループ全体を概観すると
売上高は、前期までは右肩上がりで増加していますが
今期については、5507億円を計上していますが
前期との比較で1億5700万円の減少です。
また、利益についても、
前期までは400億円以上を確保していましたが
今期は、138億円の赤字に転落しています。
減収減益になり、厳しい結果となりました。
ただし、
キャッシュフローは異なる様相を呈しています。
毎期、安定した営業活動キャッシュフローを創出しており、
今期に関しても、過去の実績に見劣りしない584億円を生みだしています。
前期比較で、減益でしたが
営業活動キャッシュフローは、前期よりも106億円多くなっています。
最終的には、今期は現預金を増加させて
資金残高も一定水準を確保しています。
「成長拡大型」と判定できます。
グループ全体としては
業績は堅調といえます。
では、フジテレビジョンの決算はどうだったでしょうか。
子会社であるフジテレビジョンについては
キャッシュ・フロー計算書の公表はありません。
親会社の有価証券報告書や決算公表から損益状況のみが確認できます。

売上に関して
前期までは2380億円程度を計上しておりましたが
今期は2141億円の計上となり、239億円の減収です。
利益についてみると
過年度は、毎年、十億円単位で黒字決着でしたが
今期は328億円の赤字落着となり、
前期比で365億円の減益です。
人権・コンプライアンスの問題により
広告収入の減少が大きく響いたことが
数字にも表れているようです。
そこで
今後の㈱フジテレビジョンについて
ステークホルダー(株主、広告主、視聴者、従業員)との関係がどうなっていくかを
易(えき)で占ってみました。
その結果、
「火沢睽(かたくけい)の2爻(こう)変、
火雷噬嗑(からいぜいごう)へ之(ゆ)く」
を得ました。

まず、本卦「火沢睽」です。
「睽」という字は、
目をそむけ見ないようにすること、
転じて、目にかどをたてる、にらみ合う、そむく意味となります。
この卦象をみると
上の火は、燃えあがって、その気は上昇し、
下の沢は水が地中にしみこむので、その気は下降し、
互いの気は交わらずに離れそむくことを表します。
人は互いに仲睦まじく、強調するにこしたことはありません。
反目や食い違いを表す睽という字は、目をそむけて相手を見ないようにすることですが
なぜ見たくないのでしょうか。
そこには、相手に対する関心が根底にあるからにほかなりません。
惹かれるのも、反目するのも、相手への関心がもたらすものなのです。
そういう意味において
㈱フジテレビジョンとステークホールダーは
それぞれに対して、関心を持っていますが
人の世の常として、意見の相違や食い違いが生じてしまいます。
㈱フジテレビジョンとステークホルダーとの意見や考えの相違はしばらく続くでしょうが
今回の総会で、株主に今後の経営方針が認めれました。
また、総会後には、サントリーが7月からCM出稿を再開することを発表しました。
このように、ステークホルダー側も、目をそむけることを止め、
フジテレビジョン側に目を向けるようになってきています。
視聴者に対しては、信頼を取り戻すような番組創りを進めていくことでしょうし、
社内の従業員に対しては、真摯な態度で人権・コンプライアンス問題に対応していくことでしょう。
しかし、気になるのは、
本卦「火沢睽」の之卦「火雷噬嗑(からいぜいごう)」です。
之卦とは、なりゆきを表す卦です。
「噬嗑」とは
口の中に挟まっている異物をかみ砕き、噛み合わせをよくすること。
そこから
内部をかき乱すもの、
例えば獅子身中の虫とか結束を乱す異分子といった、内側の不純物を除去し、
また事をなすにあたり、その全身を妨害するものがいたら
断固粉砕しなければならないとするものです。
取り除くことによって初めて平安を得ます。
これは、
人権・コンプライアンス問題のを積極的に解決していくと解釈できますが
ただし、その過程において
人事などで、強権的な排除が行われる可能性があること含蓄しているででしょう。



























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