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易経とキャッシュ・フローの沼No8               ~百円均一市場第2位セリア~

  • 執筆者の写真: 赤田 元日出
    赤田 元日出
  • 10月26日
  • 読了時間: 9分

今回は、百円均一市場の第3回目です。

業界第2位のセリアの分析を行います。


まずは、

業界内のセリアの位置について

売上高を基準に確認します。


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セリアは、2025年に売上高2363億円を計上しています。

1位のダイソーが6750億円の売上高ですので、その差は4387億円です。

3位のキャンドゥの売上高は833億円ですから、1530億円の差があります。

1位ダイソー、3位キャンドゥとはいずれも大きな差がありますので

不動の2位といえるでしょう。


今度は、売上高の増加率について

1位ダイソーと比較してみます。


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ダイソーは、

2024年の売上高の伸び率が、前期比7.7%、

2025年は前期比8.0%です。

一方、

セリアは、2024年が5.1%、2025年が5.9%と5%台です。

ダイソーが、7~8%の伸び率で、

セリアが5%の伸び率ですから、

2位セリアが必死に追走しているものの、

1位ダイソーの背中はますます遠くなるばかりです。


それでは、

セリアの個別分析に入りましょう。


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損益を見ると、

売上高は右肩上がりで、

経常利益も当期純利益も安定しています。

好調の要因を、直近の出店状況で確認してみます。


「出退店については採算性を精査しつつ前向きに進めた結果、当事業年度において出店が直営店125店舗、退店が直営店74店舗、FC店2店舗、期末の店舗数は直営店2037店舗、FC店35店の合計2072店となりました。」

(第38期有価証券報告書より)


このように、店舗は順調に純増しています。


次に、キャッシュ・フローを分析します。

なお、

投資活動キャッシュ・フローは、主に出退店に伴うもので、直近では定期預金への積み立てが含まれ、

財務活動キャッシュ・フローについて、借入はなく、配当金支払いが、年5,266百万円あります。


第34期、第35期・・・【成長拡大型】いずれも十分な営業活動キャッシュ・フローを創出しており、これを元手に、投資活動キャッシュ・フローと財務活動キャッシュ・フローを賄っています。


第36期・・・【縮小衰退型】営業活動キャッシュ・フローで113億円を生みだしていますが、投資活動キャッシュ・フローと財務活動キャッシュ・フローで、ほぼ同額を注ぎ込んでいますが、現金残高は減少しています。


第37期・・・【拡大成長型】営業活動キャッシュ・フローで122億円を生みだしていますが、投資活動キャッシュ・フローと財務活動キャッシュ・フローで、ほぼ同額を注ぎ込んでいますが、現金残高は微増しています。


第38期・・・【縮小衰退型】営業活動キャッシュ・フローで、160億円産み出して、この3年間では最高額です。

一方、122億円という例年の2倍の金額を投資活動にあてています。そのため資金は減少しています。

この投資活動キャッシュ・フローの中身を精査してみると、定期預金預け入れが7,488百万円あり、これがなければ、拡大成長型と判断できます。


フリーキャッシュフローと財務活動キャッシュ・フローの状況を見てみます。


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フリーキャッシュフローが、常に黒字で、

既に分析した第3位キャンドゥ、第4位ワッツと比べると大変安定しています。

財務活動キャッシュ・フローも中身は、配当金の支払いで、毎年一定です。

そうは言っても、

直近はフリーキャッシュフローの金額が少なくなっているように見えます。

キャッシュ・フロー計算書上の現預金残高も減少傾向です。


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投資活動キャッシュ・フローの中に

定期預金への積み立てがあります。

インフレ傾向で、利率が上昇傾向にあるため、

定期預金への預け入れに大きな魅力があったということでしょう。

定期預金も現預金ですので、

貸借対照表の現預金残高を確認してみます。


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このグラフを見ると、

現預金残高は安定しており、

直近の第38期は、前期よりも40億円の貯金を増やしています。

現預金残高やキャッシュ・フローの状況をみても

盤石と言えます。

(なお、以前の回でセリアの業績にふらつきがみえると指摘したのは

キャッシュ・フロー計算書上の現預金残高の減少傾向を指して言ったものです。

貸借対照表上の現預金残高は安定していますので

財務上「ふらつき」はありませんので訂正いたします。)


セリアの現状をまとめると、下記です。

売上高は毎年右肩上がりに増加していて

利益も毎年黒字を確保している。

キャッシュの動きをみると

毎年大きな営業キャッシュ・フローを創出していて

出退店に伴う投資活動や配当金支払いを賄っている。

インフレ環境で利率上昇を好機とみて、定期預金へ余剰資金を投下する余裕もうかがえる。

無借金経営で現預金は安定しており、まさに盤石の態勢である。


そこで、

セリアの今後の経営状況について易占を行いました。

得卦は


「地雷復の初爻(こう)変、坤為地へ之(ゆ)く」


です。


本卦「地雷復」と之卦「坤為地」
本卦「地雷復」と之卦「坤為地」

地雷復の内容については、

易の卦を12か月に配置したものを見ていただくとイメージしやすいと思います。

旧暦の一年12ヶ月を陰陽の消長で表現し、十二の卦を配したものであり、この地雷復は、太陽の力が復活する冬至に配されています。

旧暦では、11月を冬至とし、以後順に、12月を地沢臨、1月を地天泰、2月を雷天大壮、3月を沢天夬、4月を乾為天、夏至の5月を天風姤、6月を天山遯、7月を天地否、8月を風地観、9月を山地剥、10月を坤為地とし、再び11月の地雷復に戻ります。

冬至を指して、一陽来復というのは、この卦の形をそう呼んだものです。

10月の坤為地はすべて陰から成り立っています。

11月の地雷復は、その坤為地の一番下(初爻)に、陽が一つ入ってきました。

12月以降はさらに陽が一本ずつ増えていきます。

これは陽というプラスの要素が増加していくという様を表しており、

この地雷復は、その「始まりの時」といえるのです。



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次に地雷復の具体的な中身をみていきます。

その初爻には、

下記の説明があります。


「遠(とお)からずして復(かえ)り、悔(くい)に祇(いた)ること无(な)し、元吉(げんきち)なり」


初爻は、復の卦の最初なので、

道に復(かえ)るのに、速やかなる者です。

なおかつ、陽爻で、積極性があるので

ひとたび過ちが有ったとしても、速やかに過ちを改めて道に復る者です。

だから、「遠からずして復り」、と述べています。

「遠からず」、というのは、「深からず」、といった意味であり、

一旦は過ちが有っても、また、道を去ってもすぐそばで迷っている程度なので、

改心して道に復り戻るのも速やかなのです。


およそ人というものは、

聖人でない限り、過ちのひとつやふたつは有るものです。

その過ちがあったとき、

速やかに気付いて改めるのが賢いのであって、

そうしていれば、大した問題もないものです。

それが、しばしば過ったり、あるいは、過ってもなかなか改めないときは、

大きな問題に発展したりして、後悔することにもなります。

今、この初爻は、

過ちを繰り返さず、速やかに道に復るので、

後悔するようなことにはならないで済みます。

だから、「悔に祇ること无し」、と言っています。

「祇」の字は「至る」という意味。

過ちがあっても速やかに道に復るから

悔に至らないのであって、

これこそ大善の吉の道です。

だから、「元吉なり」、と評価しています。


ところで、

ここでは、「悔无(な)し」、ではなく、

「悔に祇ること无し」、と、いささか遠まわりな言い方になっています。

これは、「悔无し」が、最初から過ちのないことを意味するからです。

過ちを犯したからこそ、悔いに至るか至らないかが問題になるのです。

要するに、

「悔に祇ること无し」、は、

一旦は道を履み違えて咎も有るけど、

改めて正しい道に復るので、悔いに至ることはない、ということです。


これをセリアに当てはめてみます。

業績順調なセリアは

さらなる業績拡大を目指して、

新たな経営方針(例えば他業種へ進出など)を打ち出しますが

再度慎重な討議を重ねて、

その経営方針を白紙に戻して、事なきを得る

と、読めます。



そして、

成り行きですが

之卦の「坤為地」を解釈します。

この坤為地の卦については、

百円均一市場のワッツを分析する際に

本卦として登場しています。

その時に説明したように、

坤為地は、6爻のすべてが陰ですので

陰を代表する卦で

包容、調和、統一のはたらきを意味します。

また、性質はあくまで従順です。


卦の説明には


「君子往(ゆ)くところあり。

先んずれば迷い

後るれば主を得て、利あり」


とあります。

陽は陰に先立ち、陰は陽につき従うものです。

もし、陰なる者が、陽より先に出て何かをやろうとすれば、道に迷い失敗します。

したがって、

よき陽の先導者を見つけ、その後ろに従ってついて行くのがよい、

という意味合いになります。


これを、セリアに当てはめてみると、

均一価格市場では、

主導的地位、つまり業界一位ダイソーを追い越すことを目指すのではなく

従順な姿勢で、今の2位のポジションを維持するのがよい。

そして、今のポジションを堅持するために

ダイソーに付き従っていくならば、

何事も無事に進み吉である、

ということになります。


以上の「地雷復の初爻(こう)変、坤為地へ之(ゆ)く」の解釈をまとめると

下記です。


業績順調なセリアは

首位のダイソーに追いつくために

さらなる業績拡大を目指して、

新たな経営方針(例えば他業種へ進出など)を打ち出します。

しかし、再度慎重な討議を重ねて、

業界一位ダイソーに追いつき、追い越すことを目指すのではなく

従順な姿勢で、今の2位のポジションを維持するのが得策であると考えなおし、

その経営方針を白紙に戻して、大きな過ちに至ることを回避します。

ダイソーに付き従っていくことで

業界2位の地位は確保することを方針とすることで

事業発展は順調に続いていくことになるだろう。


以上が、セリアの分析となります。

これまで3回にわたって、百円均一市場の分析をしてきました。

業界1位のダイソーは上場企業ではないため、決算書の公表がなく、

分析ができないのは残念です。

セリア、キャンドゥ、ワッツの分析をみますと

共通点は、いずれの会社も右肩上がりで業績を伸ばし続けています。

しかしながら、各会社のキャッシュ・フローの状況は異なっています。

3位キャンドゥ、4位ワッツは、

出店競争に巻き込まれて投資活動キャッシュ・フローの負担が、のしかかり始めています。

2位セリアは、出店の投資は継続しているものの、

余剰資金を定期預金へ投資する余裕があります。

この業界に、3coinsという新興勢力も加わり、

売上高では、すでに3位キャンドゥに追いついています。

ますます出店競争が激化することが予想されますので

投資活動キャッシュ・フローの金額をいくらにするのか、

その資金を賄うために、どのような経営を行っていくのか。

今後の注目点になると考えます。



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※お知らせ※

YouTubeチャンネルを開設しました。

今回の「セリア分析」について解説動画をアップしていますので

ブログと合わせてご覧ください。



YouTubeチャンネルのリンク; 赤田元日出税理士事務所


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